「一族の土地」という言葉に、なぜ惹かれたのか

しぜんのまほう
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土地の話だと思って読み始めたら、暮らしの設計の話でした。
アナスタシアが伝えるメッセージは、ただ自然を愛するだけではなく、自然と一体となって生きることの大切さを説いてくれます。

例えば、現代では当たり前に使っている
・化学薬品
・加工食品を控え
・自らが育てた植物や木々との深いつながりを持つ
など、心身の健康に大きな影響を与えるという考えや、私たちが自然を大切にし、その恩恵を受けることこそが「真の幸福」だと教えてくれています。

keko
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一族の土地とは何か

「一族の土地」は、ロシアの作家ウラジーミル・メグレさんが書いた
アナスタシア〜ロシアの響きわたる杉シリーズ〜』の中で語られる構想です。

内容をまとめると、こうなります。

・一家族に1ヘクタール以上の土地を、政府が無償で提供する

・その土地と、そこで採れるものには課税しない

・相続税なしで、子孫が代々受け継いでいける

・土地の半分から4分の3は、森にする

ダルマ天使
ダルマ天使

読んだとき、一番おどろいたのは「1ヘクタール」という数字に理由があったことでした。

これより狭いと、暮らしが成り立たなくて、よそへ働きに出なければならなくなる。

これより広いと、自分たちだけでは手が回らなくなって、誰かを雇うことになる。

雇うということは、そこに上下関係が生まれるということです。

つまり1ヘクタールは、「一家族が自分たちの手で世話ができて、なおかつ誰も雇わなくて済む大きさ」として選ばれている。

これは精神論ではなくて、設計だなと思いました。

なぜ「代々受け継ぐ」ことが大事なのか

この構想でもうひとつ大事なのが、土地を分割せずに受け継ぐという条件です。

これ、地味に見えて、とても効くところだと思っています。

もし土地が自分一代限りのものだったら、人は自分が生きているうちに回収できるものしか植えません。

数か月で採れる野菜は植えても、実がなるまで何十年もかかる木は選ばなくなります。

土を育てるような、何十年もかけて効いてくることも、後回しになります。

でも「この土地は自分の子どもや孫が受け継ぐ」と決まっていたら、選ぶものが変わります。

理念で「長い目で見ましょう」と呼びかけるのではなく、条件のほうで長い視野を必要にしてしまう。

私がこの構想でいちばん面白いと思ったのは、実はこの部分でした。

ロシアでは、実際に法律になった

ここからは、本の中の話ではなく、現実に起きたことです。

ロシアのベルゴロド州では、2010年3月に「一族の土地に関する州法」(第331号)が制定されました。条文はいまも公開されていて、「一族の土地」と「一族の集落」をきちんと定義し、州がどう支援するかまで定めた、本物の法律です。

そして2016年から2017年にかけて、州は廃村や過疎になった集落150か所で、約2000ヘクタールの土地を用意しました。

特別な条件で住民に渡して、村をよみがえらせよう、という計画でした。

構想が本になり、読者が動き、州の法律になり、土地まで用意された。

ここまでは、多くの記事で紹介されている通りです。

その16年後に起きたこと

でも、この記事では続きも書きます。

2026年3月、ベルゴロド州でこの法律の廃止が検討されていることが報じられました。理由は、実際にはほとんど使われなかったからです。

州の担当者が説明した数字は、こうでした。

  • 16年間で結ばれた無償使用契約は、62件
  • そのうち 22件は、利用者本人の申し出で解除
  • 残った40区画のうち、家が建ったのは10件
  • 11区画では、活動している形跡がない

13の自治体では、申請そのものが一件もなかったそうです。

そして担当者が挙げた原因が、私にはとても示唆的でした。

「一族の土地」という言葉が、法的に定義されないままだったというのです。

どういう条件を満たせば優遇して土地を渡していいのか、その基準がなかった。

連邦レベルでも、2023年に「家族の土地と家族の集落に関する連邦法案」が国家院で否決されています。

なお、すでに渡された区画が取り上げられることはなく、契約はそのまま続くとされています。

住民の方たちは「廃止ではなく、実際に土地を作ってきた人たちを交えて条文を練り直してほしい」と知事に要望を出しました。

この結果を、私はこう受け取りました

失敗した、という話をしたいのではありません。

理念が先にあって、設計が後回しになると、こうなる。

私にはそう見えました。

「一族の土地」という言葉には、人の心を動かす力があります。

実際、州議会を動かして法律にまでなった。

でも「それは具体的に何なのか」を誰も決めきれなかったので、法律は器のまま残って、16年かかって62件で終わった。

美しい言葉が、そのまま美しい暮らしになるわけではない。

そこを引き受けたうえで進むほうが、たぶん遠くまで行けます。

よく混同される、もうひとつの制度

ネット上の日本語の記事では、この構想と「極東1ヘクタール法」がよく混ざっています。ここは分けておきたいところです。

極東1ヘクタール法は、2016年6月1日に施行された、別の制度です。
希望者にロシア極東の土地1ヘクタールを無償で提供し、5年間の無償利用のあと、実際にその土地を使っているなどの条件を満たせば、所有権か49年間の使用権が得られる、というもの。

目的も違っていて、こちらは極東の人口減少への対策として作られました。

「アナスタシアの夢が国の政策になった」と書かれているのを何度か見かけましたが、正確には別のできごとです。

ここを混ぜてしまうと、実際に動こうとしたときに話が合わなくなります。

日本では、いま何ができるのか

では、日本ではどうなのか。

大きく変わったことが、ひとつあります。

2023年4月1日に施行された改正農地法で、農地を取得するときの「下限面積要件」が撤廃されました。

それまでは、都府県では50アール(5000平方メートル)、北海道では2ヘクタール以上を耕作しなければ、農地を取得できませんでした。

つまり、小さな農地を持ちたいと思っても、法律のほうが許してくれなかったのです。

それが、なくなりました。

個人が小さな農地を持てるようになったのは、ほんの数年前のことなんです。

ちなみに1ヘクタールは1万平方メートル。以前の下限だった50アールのちょうど2倍にあたります。

ただし、注意したいこと

緩和されたのは、農業をするために農地を取得する場合(農地法第3条)だけです。

その土地を宅地にして家を建てる、といった転用を目的とした取得(同第5条)の基準は、まったく変わっていません。

農業振興地域の中の農地などは、原則として転用が認められません。

つまり「畑を持つ」ことのハードルは下がったけれど、「そこに住む」ことのハードルは下がっていない、ということです。

ここを混同したまま土地を探すと、あとで行き詰まります。

実際に動くときは、その土地がある市町村の農業委員会に確認するのが確実です。

ここは正確に書いておきます。
ここは正確に書いておきます。

1ヘクタールを待たなくても、できること

私が思う暮らしの整え方は、気合やストイックさで続けるものではなくて、日常に溶け込ませていくものです。

だから私の研究場所は、台所そのもの。

第二キッチンのはじまりは、父が脳梗塞で入院したことでした。

だるま王子
だるま王子

実はその手前から、ずいぶん長いこと食生活の話はしていたんだけどね💦

四毒抜きとは?
四毒抜きとは?

でも、響かなかった。

幸い後遺症は残らなかったものの、退院してきた父は、元の食生活に薬を足せば解決すると思っている様子でした。

言っても聞かないのなら――と、そこで私は言葉をやめて、行動に切り替えました。

祖母の離れだった場所を使って、純和食が置いてある場所をつくる。

食べるかどうかは、その人に委ねる。

先に変わったのは、母でした

ところが、最初に変わったのは父ではありませんでした。

母です。

母はもともと、父と同じような反応をしていた人でした。

それが、この暮らしを意識するようになってから、これまで経験したことがなかったほどお通じが良くなったと喜んで、見た目も考え方も若返っていきました。

買ってきた玉ねぎを庭に植えたのも、母です。

庭先のたまねぎ

そして最近になって、
そんな母を見た父が、自分から生活習慣を見直すようになりました。

私が二年かけて言葉で伝えられなかったことを、母の変化が伝えてくれた。

私が学んだこと

このできごとから私が受け取ったのは、こういうことでした。

人は説得では変わらないけど、環境が変わった人のそばにいると、変わることがある。

そして私にできたのは、離れという場所を用意して、そこに食べるものを置いただけ。
誰にも、何も、頼んでいません。

一族の土地の1ヘクタールが教えてくれるのも、たぶん同じ順番なのだと思います。

土地の広さそのものではなくて、条件を整えると、暮らしのほうが動きはじめる

私にとっての、その最初の一区画が、祖母の離れだった場所でした。

そこから、これまでとは違う筋の、親子の愉快な交流まで始まっています。

おわりに

一族の土地は、まだどこの国でもうまくいっていません。

法律になった場所でも、16年で62件でした。

それでも私がこの構想を大事に思うのは、「土地を代々受け継ぐと、人の視野が長くなる」という一点が、とても正確だと思うからです。

そしてそれは、1ヘクタールがなくても始められます。

来年も再来年も同じ場所に立つつもりで、何かを植える。

今日の自分ではなく、何年か先の誰かのために手を入れる。

それができる場所を、まず一つ持つこと。

私にとっては、それが第二キッチンでした。

あなたにとっての一つは、どこでしょうか。

第二キッチンをはじめた理由|父の脳梗塞と、行動で示す純和食の記録
第二キッチンをはじめた理由|父の脳梗塞と、行動で示す純和食の記録

参考にした資料

  • ベルゴロド州法 2010年3月15日 第331号
    「ベルゴロド州における一族の土地について」
  • 「ベルゴロド州民、一族の土地法の廃止をしないよう要望」
    (Открытый Белгород(オープン・ベルゴロド)、2026年3月17日)
  • 「連邦『極東1ヘクタール』法の最初の成果」
    (ロシア・ビヨンド、2016年9月6日)
  • 農林水産省 農地法関係資料/2023年4月1日施行 改正農地法
  • ウラジーミル・メグレ『アナスタシア〜ロシアの響きわたる杉シリーズ〜』
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